日本では「ナレッジマネジメント」とも呼ばれることがあります。要するに知識の生み出しから共有まで、より生産的になるように組織を運営していくことを指します。
企業のような組織の中では、人が集まって集団として活動します。一人一人は役割が異なり、持っている知識や経験も異なりますが、それらを組織の中で共有し、発展させていくことが生産性を高めることにつながります。
日本人は「集団主義的」とよく言われますが、本当に組織の中で知識がうまく共有されているでしょうか。ほんとうは共有しなければいけないのに忙しくてできていないという事例はたくさんありそうです。
組織の中にある知識の形としてはまず「文書」があります。それも公式のものから、非公式で個人的なものまで千差万別ですが、少なくとも文書の形になっていれば、他者との情報共有はある程度可能です。文書のようなものを「形式知」とよびます。
やっかいなのは、形になっていない「暗黙知」とよばれる知識です。これはきわめて個人的なもので、本人すらその知識を意識していないことが多いものです。体で覚えている職人技はそれにあたりますが、デスクワークにおいてもやはり暗黙知は存在します。文書の担当者が交代すると、とたんに事務作業が滞るという事態に陥ることも多いでしょう。前任者が最も正確で効率的な方法を暗黙知として体得していたのに比べて、後任者はその知識を持たずに手探りで仕事をするためです。
このように組織の中に存在する「形式知」と「暗黙知」の相互関係をモデル化したものとして「SECI」モデル※が有名です。このモデルは組織内の知識が個人と組織の相互作用によってダイナミックに深化していくことを示したもので、日本発のモデルとして世界的に有名です。
このモデルのように、組織内の知識管理や創造性向上についてさまざまな理論や実践があります。それらを現場の状況に応じて、適宜応用することで、現場の知識マネジメントを改善していきます。
※Ikujiro Nonaka and Hirotaka Takeuchi, "The Knowledge-Creating Company: How Japanese Companies Create the Dynamics of Innovation", Oxford University Press (1995)、邦訳 野中郁次郎、竹内弘高「知識創造企業」、東洋経済新報社(1996年)