詐欺師の休暇

(2026.01.13)
正月は離れていた家族が久しぶりに集まり、賑わう季節です。
老いた父母は子や孫に囲まれて、幸せな気分にひたるのでしょう。
そういう機会にこそ、次のような話をしておく必要があります。
警察庁は2025年12月24日に「令和7年11月末の特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」を発表しました。
https://www.npa.go.jp/news/release/2025/20250227002.html
●特殊詐欺とは
警察庁の特殊詐欺対策ページ[1]に詳細な情報と解説が載せられています。
特殊詐欺とは、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪を指します。
「オレオレ詐欺※1」、「預貯金詐欺※2」、「キャッシュカード詐欺盗※3」、「架空料金請求詐欺※4」、「還付金詐欺※5」、「その他※6」に分類されています。
最近では警察官に扮装して顔出しで接触してくる場合もあるそうです[2]。次々と新手を繰り出してくるのにはある意味で感心してしまいます。
●SNS型投資・ロマンス詐欺とは
ソーシャルネットワークシステム(SNS)を通じて最初に接触してきて、その後、言葉巧みに投資やロマンスの話から金銭等をだまし取る詐欺です。SNSを使うことで、昭和の頃の詐欺に比べて格段にコストが下がっています。
このうち、SNS型投資詐欺とは、SNSのダイレクトメッセージで接触後、被害者をLINEなどの他のSNSに誘導し、「株や暗号資産に投資すれば利益が得られる」などと言葉巧みに被害者を信用させ、最終的に、「投資金」や「手数料」などという名目で、ネットバンキングなどの手段により、金銭等を振り込ませる詐欺の手口です。
またロマンス詐欺とは、SNSやマッチングアプリなどを通じて出会った者と、実際に直接会うことなくやりとりを続けることで恋愛感情や親近感を抱いてしまい、金銭等をだまし取られてしまう詐欺です。
●件数、被害額とも増加の一途
2025年11月までの約2年間の特殊詐欺の被害件数と被害額の推移を図にまとめたものが図1、図2です[1][3]。図3は投資・ロマンス詐欺の件数・被害額です。
被害は大都市圏に集中しており、7都道府県(東京、大阪、神奈川、埼玉、愛知、兵庫、千葉)の件数は全体の64.5%を占めます。
1件あたり平均の被害額は350万円、1日当りの合計被害額はなんと”2億円”近くになっています。
図1、図2に示したように、手口別ではオレオレ詐欺が圧倒的に多く、最近での増加率も高い状況です(図4)[4]。




●相談できる人がいるかどうか
何年も前から特殊詐欺の話題はテレビ等で取り上げられ、警察の啓発活動も広範囲でおこなわれています。にもかかわらず、今だに詐欺に引っかかる人が”増加”しているというのはどういうことでしょうか。
特殊詐欺の特徴は電話など直接対面しない形で、人の心理を揺さぶる点にあります。
そもそも詐欺行為自体がそのように人の心理を突いてくるものですが、特に特殊詐欺はオンライン特有のスピードで”決断を急がせる”ことが特徴と言えるでしょう。本来ならばじっくり考えるべき時間を与えず、短時間に決断を迫ります。
一人でこれに対処するのは容易ではありません。特に高齢者はそうです。
親族が同居している、あるは相談できる環境にあれば、たいていは未然に防ぐことができます。
しかし親族と同居していても、昼間は老人一人で留守番しているというケースも多いでしょう。あるいは狡猾な詐欺師によって親族との連絡を遮断されるケースもあると聞きます。
冷静に考えれば”おかしい”と気づくのでしょうが、慌てさせる詐欺師の手に乗ると、動揺して行動が制御されてしまいます。
まずは”相談できる人”がリアルにいてくれることが大事です。
●65歳以上の状況
このような特殊詐欺の被害者のうち、高齢者(65歳以上)のプロフィールを図示したのが図5、図6です。


図5から見えるのは65歳以上の高齢者が巻き込まれる場合は意外にも半分程度です。オレオレ詐欺よりも預貯金詐欺、還付金詐欺、キャッシュカード詐欺盗が多い傾向です。
図6からは面白い傾向が読み取れます。オレオレ詐欺、預貯金詐欺、キャッシュカード詐欺盗の3種について、女性の比率が高いという点です。情につけ込まれやすいといった理由でしょうか。
逆に架空料金請求詐欺や融資保証金詐欺は男性の被害者が多い傾向があります。ふだん金銭の管理や手続きをしているのが男性であることが多いせいでしょうか。交際あっせん詐欺の場合、被害者は1/4が高齢者で、かつ全員男性でした。
●特殊詐欺の季節変動?
図1を見ていると少し奇妙な点が見当たります。
ずっと件数が右肩上がりだったのですが、2025年1月、5月、8月に大きな減少が見られます。
かたや図3におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の件数は1月から10月にかけて単調増加をたどっていて、季節の変動はなさそうです。
厳密性を欠く言い方になりますが、特殊詐欺の狙いが独居高齢者であるならば、家族が集まる正月や盆の季節に電話をかけることを避けたのではないか、はたまた帰省していた家族が詐欺を未然に防いだのではないかという想像もできます。
あるいは詐欺師のほうも正月と夏季に休暇をとったのでしょうか(笑)。■
※1 親族、警察官、弁護士等を装い、親族が起こした事件・事故に対する示談金等を名目に金銭等をだまし取る(脅し取る)手口です。
※2 自治体や税務署の職員などと名乗り、医療費などの払い戻しがあるからと、キャッシュカードの確認や取替の必要があるなどの口実で自宅を訪れ、キャッシュカードをだまし取る詐欺です。
※3 警察官などと偽って電話をかけ「キャッシュカード(銀行口座)が不正に利用されている」「預金を保護する手続をする」などとして、嘘の手続きを説明した上で、キャッシュカードをすり替えるなどして盗み取る手口です。
※4 未払いの料金があるなど架空の事実を口実とし金銭等をだまし取る(脅し取る)手口です。
※5 税金還付等に必要な手続きを装って被害者にATMを操作させ、
口座間送金により財産上の不法の利益を得る手口です。
※6 融資保証金詐欺、金融商品詐欺、ギャンブル詐欺、交際あっせん詐欺など
[1] 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/
[2] 警察庁「ニセ警察詐欺に注意!」(2025年11月17日) https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/241218/02.html
[3] 警察庁「令和7年11月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」 https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/assets/img/new-topics/detail/251225/01/03.pdf
[4] 警察庁「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」(2025年5月23日) https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2024.pdf
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