ロードキル

(2025.10.12)
10月10日に沖縄総合事務局から「官民連携でケナガネズミの事故(ロードキル)対策開始~10月はケナガネズミの事故多発期間~」が報道発表されました。
https://www.ogb.go.jp/-/media/Files/OGB/Kaiken/kyoku/kisya/R071010/PDF_20251010_1_kisya.pdf

●ケナガネズミとは
調べてみると、奄美大島、沖縄島北部、徳之島に固有の種とあります。体長30cmほど、尾長30cmくらいで、全長が60cmにもなる日本最大のネズミです[2]。長い毛に覆われています。
樹上性、夜行性、雑食性。地上で見ると大きなドブネズミのようですが、樹上生活をしているさまを見るとモモンガのように可愛く見えます。動作は普通のネズミのようにすばしっこくなく、緩慢だそうです(だから事故にあいやすい)。
数が減少しているようで、環境省版レッドリストで絶滅危惧IB類に指定されています。

●ロードキル
筆者はこの言葉に新鮮さを感じましたが、日本ではすでに1990年代から使われていたそうです。
たしかに以前から希少動物(イリオモテヤマネコやヤンバルクイナ等)の路上死亡が問題になっていました。ロードキルとは、野生動物が、路上で、自動車に轢かれて、死んでしまう、という意味を一言で片づけられる便利な言葉でしょう。

●沖縄の状況
毎年秋がケナガネズミの繁殖期で、ロードキルが増える季節だそうです。
そこで今回は、産学官が連携して、特に沖縄北部の道路に注意の路面表示を付けたこと、啓発ポスターを作成したことが発表されました。

これらの対策の中で面白いと感じたのは、レンタカーのカーナビへ注意喚起のポップアップ掲示と音声メッセージを出す工夫です。
沖縄の交通は自動車に依存していて、観光客の多くはレンタカーを利用します。観光客は道路に不慣れですから、そこにこの機能を付けたのはよいアイデアだと思います。
今のところ、特定の自動車メーカーのレンタカー3,000台で実施する予定とのこと。

図1. 路面表示デザイン([1]より引用)
図2. カーナビ画面の例([1]より引用)

●道路、自動車、IT
ケナガネズミの警報にとどまらず、山間地でのクマ出現警報、観光地の人ごみ発生警報など、リアルタイムの状況をカーナビから出力することはそれほど難しいことではないでしょう。

そのためにはまず通信サービスの標準化が必要です。特定のカーナビにしか適用できない技術では普及は望めません。
また外国人ドライバーの急増に対応して、英語版のサポートも必要でしょう。
ともかく運転する人間に負担をかけないことがこの手のサービスには不可欠です。

ITS(Intelligent Transport Systems)という用語は最近見かける機会が減ったと思います。
代わりに”なんたらDX”という言葉で言い換えて、看板の付け替えが流行しています。国土交通省は道路システムのDXを”xROAD”(クロスロード)などと称しています[3]。

その言葉通り、道路・自動車・ITが一体になっていくことが望まれます。

●自然と人間
最近、クマの出現情報がニュースでよく取り上げられます。ケナガネズミと違って、こちらは人間が被害に遇うことになります。
原生林の中に広い自動車道路を作ったことがロードキルの原因であるのと同様に、里山を壊して住宅地を拡げたことがクマ被害の遠因といわれます。

技術によって両者の折り合いをうまくつけられるようにできないものでしょうか。■

[1] 沖縄総合事務局「官民連携でケナガネズミの事故(ロードキル)対策開始~10月はケナガネズミの事故多発期間~」(2025年10月10日) https://www.ogb.go.jp/-/media/Files/OGB/Kaiken/kyoku/kisya/R071010/PDF_20251010_1_kisya.pdf
[2] 珍獣図鑑(4):日本最大。琉球諸島の一部だけで暮らす天然記念物、ケナガネズミって? https://hotozero.com/knowledge/animals_004/
[3] 国土交通省「xROAD」 https://www.xroad.mlit.go.jp/

Follow me!