自転車ルール

(2025.09.17)
9月4日に警察庁「自転車を安全・安心に利用するために」(自転車ルールブック)の作成について、という発表がありました。
https://www.npa.go.jp/news/release/2025/20250902001.html

ここでいう「自転車ルールブック」[1]とは、自転車の基本的な交通ルールと警察の交通違反の指導取締りの基本的な考え方についてとりまとめたものです。
2024年4月から道路交通法が一部改正されて、青切符制度が導入され、自転車に対する違反取り締まりが強化されたことが反映しています。

●自転車安全利用五則
別段、新しい規則が増えたわけではなく、自転車は自動車同様の「車両」と再認識して、従来の原則をもう一度確認して守ってほしいというのが警察庁の立場です。
自転車を運転するには:
1 車道が原則、左側を通行。歩道は例外、歩行者を優先
2 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
3 夜間はライトを点灯
4 飲酒運転は禁止
5 ヘルメットを着用

1では、まず歩道を走行するのは例外であることが重要です。最近は車道と歩道の通行をごちゃまぜに利用している場合にトラブルが発生しがちです。車のつもりで通行していたのを、途中から歩行者に成り代わるようなものですから。
5のヘルメット着用もまだ浸透しているとはいえません。
自転車の飲酒運転やあおり運転などは悪質とみなされて赤切符(刑事手続き)の対象となります。
ながらスマホ運転や傘差し運転は危険度が高いほうですが、まだ青切符対象です。イヤホンを付けたままの運転も基本的には違反です。

●昭和から先送りされた問題
最近は自転車専用レーンの整備が進んでいますが、地域によっては歩道の確保すらできていない(路側帯のみの)道路が大半です。もともと幅が狭い上に、電柱が並んでいるためによけいに歩道の幅が狭くなります[2]。25cm幅の路側帯がやっという道路が圧倒的に多い状況です。この資料には通学路ですら、3割が安全対策が未整備(2022年時点)で残っているという状況を記しています。
高度成長期に自動車の通行を優先して道路整備をおこなった後遺症といえます。

図1. 歩道の整備([3]より引用)

●違反とコストの両方を減らす
[1]には面白いことが書かれていました。
これまで自転車の交通違反に対しては赤切符という刑事手続きに依っていたのですが、これは手続きがたいそうめんどうでした。時間的・手続き的な負担が大きく、さらに不起訴処分が多くなって、結果として責任追及が不十分になるという実態でした。
一方、自動車の比較的軽い違反に対しては、1968年から青切符制度になっていて、手続きがかなり簡略化されています。自動車の交通違反件数が増加していた時代ですから、このような簡易方法をとったわけです。
今回、自転車を対象とした青切符導入も、自転車による事故・違反が増加していることの反映だろうと思います。
要するに、自動車の場合と同様に、自転車の交通違反の摘発数が増加するとともに罰金収入も増える反面、違反者の罪の意識は軽くなるという仕組みです。

●これから心配なこと
海外からの観光客による交通事故が増えているそうです。特にレンタカーによる交通ルール違反が目立つというニュースが見られます。

同様に自転車による違反も増えてくると予想します。サイクリングは海外のほうが盛んですから、日本国内の観光にも自転車を使おうとする人は多いはずです。
またいわゆるペダル付き原動機付自転車の問題もあります。速度が上がりすぎる自転車も危険物になります。
日本人にとっても、海外からの観光客にとっても自転車の危険性が増すことが危ぶまれます。■

[1] 「自転車ルールブック」(正式名称は「自転車を安全・安心に利用するために-自転車への交通反則通告制度(青切符)の導入-」) https://www.npa.go.jp/news/release/2025/rulebook.pdf
[2] 土木学会「日本インフラの体力診断-街路空間-」 https://note.com/jsce/n/nefcb6e4e6b40
[3] 令和7年度交通安全白書 特集「通学路における交通安全の確保について」 https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r07kou_haku/index_zenbun_pdf.html

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