一攫千金

(2025.05.17)
5月14日に総務省にて「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会(第3回)」が開催されました。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/online_casino/02kiban18_02000402.html

言うまでもなく、オンラインカジノでの賭博は犯罪になります[1]。
この問題に対応するために、4月23日に第1回が開催されて以降、かなり速いペースで議論が進められています。

報道発表[2]によると、この検討会の目的は、
「オンラインカジノサイトへのブロッキングを含むアクセス抑止の在り方に関する法的、技術的課題について検討を行うこと」
とし、当面の議題は、
(1)オンラインカジノの現状認識
(2)ブロッキング以外のアクセス抑止の在り方(フィルタリング、アクセス警告方式、その他)
(3)ブロッキングに関する法的、技術的課題の検討(基本的考え方、実施の根拠、制度面の課題、実施面の課題等)
とされています。
今年12月までに論点を整理して、政策提言につなぐ予定となっています。

◆スマートフォン時代の問題点
警察庁の発表[1]では、オンライン上で行われる賭博事犯について、ここ3年の検挙数では、
 2022年 59人(うち無店舗のもの1人)
 2023年 107人(うち無店舗のもの32人)
 2024年 279人(うち無店舗のもの227人)
と急増しています。
特に無店舗型が目立ちます。

無店舗型はスマートフォンを使って、いつでもどこでも可能な個人活動になるため、目立ちにくく、拡大抑止も容易ではありません。
競輪・競馬・パチンコなどの従来型ギャンブルに比較して、入り口の敷居がたいへん低いことも問題でしょう。
最近のニュースを読むと、なにげなく始めたカジノが転落の入口になり、借金がかさんでさらに悪質な犯罪に引きずり込まれるという道が見えます。

◆実態調査の結果
警察庁では2024年度にオンラインカジノに関する大規模な実態調査を実施しました[3]。
それによると、国内の15~79歳、計27,145人を対象にアンケート調査をおこない、オンラインカジノ・サイトで「有料版」を利用した経験者が3.47%、うち現在も利用している人2.03%、過去の利用者1.44%であることがわかりました。
だいた100人に3人くらいはカジノを利用している計算になります(日本人全体では約336万人と推測)。
そして経験比率が高いのは20歳台と30歳台で、経験者全体の約6割を占めています。

この調査で興味深いのは賭金の額についてです。
図1のように、10万円未満の利用者数で9割弱で、賭額の総額は約3割です。
しかしそれ以上の高額な賭をするわずか1割の利用者が賭額総額の7割を占めている現状です。
そのような高額な賭をしがちな利用者に特に注目しなければなりません。
また上記のように、利用者数は20歳台、30歳台に集中しており、市場規模もこれらの年代に偏っている状況が見えます。
したがってオンラインカジノへの対策もこれらの年代層を重視する必要があるということです。

図1. オンラインカジノ利用者数と賭額の累積比([3]より引用)
図2. 年代別のオンラインカジノ市場規模推計([3]より引用)

◆ブロッキング
通信を管轄する総務省としては、「通信の秘密」に抵触しない範囲で、いかに危ない情報を遮断できるかが関心事です。
下図は通信から見た情報遮断の全体イメージです。

図3. アクセス抑止の全体像(イメージ)([4]より引用)

これまで総務省が扱ってきたブロッキングの対象としては次の二つがあります。

●「児童ポルノサイト」対策
これは2008年頃に警察庁から問題提起され、いろいろな協議会で検討されました。最終的には2011年に民間の自主的な取り組みとしてブラックリスト化を進めました。ここでは刑法第37条の「緊急避難」という特例を根拠にしています。

●「海賊版サイト」対策
2014年に知的財産戦略本部でブロッキングの議論が始まりましたが、法制度をまとめることができませんでした。結果的にブロッキングをあきらめ、他の手段を講じることになりました。裁判例を見ても、対策は難しいようです。

いずれもブロッキングのための法制度には触れず、民間の活動などにゆだねる形になりました。
それほど「通信の秘密」の扱いはやっかいだということです。

そこで今回の検討会では、オンラインカジノ・サイトに対するブロッキングの実現可能性、期待される効果などについて議論をしようとしています。
仮に技術的に可能であっても、法的に問題が生じることは避けたいですし、実施効果も気になります。

◆依存症という病気
ギャンブル依存症という病気があります。
第2回会合の資料類[5]にはこの依存症についての状況が書かれています。
危ない情報を遮断するという物理的な対策以外に、このような病気治療のあり方も検討に値します。
社会的な孤立・孤独も依存症の遠因になるでしょう。

喫煙、飲酒など軽度のものから、薬物の依存症のような深刻なものまで幅広く依存症はあります。ストレスの多い現代ではますます増加していく傾向が見られます。
オンラインカジノに限らず、このような依存症に対しては、きちんとした診断と治療が大切ですし、それを支援する国の積極的な政策も必要です。
今のうちにやっておかないと取り返しがつかなくなるでしょう。

◆一攫千金
宝くじのようなものも、ある意味ではギャンブルでしょう。一攫千金を狙う庶民の心理をつかむわけですから。
これまで当たらない宝くじを買ってきた筆者は、ほぼそのまま社会への寄付と割り切ることにして、虚しさを和らげています。
そういえば、宝くじもオンライン販売しています。■

[1] 警察庁ホームページ「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!」 https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/onlinecasino/onlinecasino.html
[2] 「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会」の開催(2025年4月16日) https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02kiban18_02000387.html
[3] 2024年度警察庁委託調査研究「オンラインカジノの実態把握のための調査研究の業務委託」、株式会社シード・プランニング、2025年1月 https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/onlinecasino/jittaityousahoukokusyo1.pdf
[4] 第1回検討会(2025年4月23日)資料1-2 「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会(第1回)」(事務局資料) https://www.soumu.go.jp/main_content/001006992.pdf
[5] 第2回検討会(2025年4月28日)資料類 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/online_casino/02kiban18_02000395.html

Follow me!