育児と介護
(2023.06.04)
5月30日に、厚労省にて第8回「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」が開催されました。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33382.html)
この研究会は厚生労働省の雇用環境・均等局長が有識者を集めて、仕事と育児・介護の両立支援制度等について、現状の分析や論点整理の上で、今後の在り方の検討を行うものとなっています。
背景としては、2016年・2017年の「育児・介護休業法」の改正については、施行後5年が経過し、改正法の附則に基づき施行状況について検討を加える必要があるとされています。
第二に、「全世代型社会保障構築会議報告書」(2022年12月16日)の中で、子育て期の長時間労働の是正及び労働者のニーズや個々の職場の状況等に応じた柔軟な働き方を可能とする仕組みについて検討すべき旨が記述されていることにあります。
この5、6年の間に、育児・介護を取り巻く環境はますます厳しくなり、働き方改革の議論と合わせて、いくつも強化や見直しが必要になってきたということです。
今回の第8回はこれまで半年近く議論を進めてきた内容を一つの報告書にまとめる案を議論しました。
●報告書案の骨子
「骨子」というのは、報告書や提言書をまとめるにあたり、その目次や論理展開の大筋を短く表現したものです。各項目の内容は委員それぞれ熟知している事柄なので、細かいことには触れず、各項目をどのように並べるとわかりやすく、かつ説得力があるかについて議論するものです。
今回の報告書案では、
1.現状の課題と基本的な考え方
2.具体的な対応方針
の構成とし、2の具体的方策としては次の項目を挙げています。
- 子の年齢に応じた両立支援に対するニーズへの対応
- 仕事と育児の両立支援制度の活用促進
- 次世代育成支援に向けた職場環境の整備
- 介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の周知の強化等
- 障害児等を育てる親等、個別のニーズに配慮した両立支援について
- 仕事と育児・介護との両立支援に当たって必要な環境整備
●政策の手段
この手の課題に対して、国がとれる手段は、「法規制」か「減税や補助金」、そして「啓発」くらいです。
法規制が一番即効性と強制力がありますが、反対意見も多く出るでしょう。民間企業、特に中小企業にとって、働き手の労働時間が減る、あるいはそれに相当した費用が余計にかかることは、そのまま生産コストに影響が出るものとして、二の足を踏みます。緩和策を講じながら、ある程度時間をかけて進めるしかありません。
減税や補助金の場合は、その費用対効果が問われます。この場合は、先行的な企業の取組みが他の企業にどのように伝搬していくかが鍵となります。
啓発となると、さらに間接的な効果しか期待できません。おそらく人材流動化の議論と合わせて、育児・介護に理解のある先進的な企業というイメージを、いかにうまく利用するかが鍵でしょう。中小企業でも、従業員一人一人に柔軟に対応した労働条件を設けている事例はたくさんあります(※1)。「くるみん認定」(※2)や「えるぼし認定」(※3)のように、公的な認定と公共調達の組み合わせが効果を発揮するでしょう。
育児・介護に疲弊した生活では、well-beingどころではなく、生活の困窮にもつながります。育児や介護による離職は、社会にとっても個人にとっても大きな損失と認識されています。しかし、現実にはそれらの問題が、一個人や一家庭にしわ寄せされています。社会全体として圧力を緩和していくためには、国や地方公共団体、そして企業が少しずつ荷を分けて背負っていく必要があると思います。■
※1 厚労省働き方改革特設サイトCASE STUDY https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/casestudy/
※2 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html
※3 https://shokuba.mhlw.go.jp/published/special_02.htm