2030年の通信を考える
(2023.03.17)
「情報通信審議会 情報通信政策部会 総合政策委員会」(第15回)が開催されました。(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/sougou_seisaku/02ryutsu20_04000005.html)
今年2月から「2030年頃を据えた情報通信政策の在り方について」を集中的に議論して、6月中に答申をまとめることになっています。実は元々の諮問は2021年9月に出され、2022年6月に一次答申をまとめていますので、今の議論は第二次答申に相当します。
さて今後の十年間で何がどのように変化するか。
技術の話の前に、社会の変化をまず予想する必要があります。
●少子高齢化は待ったなし
これから釣瓶落としのように人口が減少していきます。一つの影響は労働人口が減るということ。もう一つは医療費の増加です。
さいわい日本人の健康志向と勤勉性のおかげで、60歳で完全に仕事から引退する人は少なく、何らかの形で労働(ボランティア含む)に参加する人が増えていくと思われます。まず年金があてにならないので働かざるを得ないと考える人も多いでしょう。
それでも影響が出てくる産業はいくつか見られます。まず小売業で、人の対面を前提としている仕事です。街中のコンビニが24時間営業をあきらめたのは、人手不足が原因です。否応なしに自動化がいたるところで進むでしょう。それによって、カスタマー・サービスのあり方も変わるでしょう。人が懇切丁寧に対応するのは、とても高級な場合のみに限られるのではないでしょうか。水とサービスはタダではない。
●インフラの老化
高度成長期にどんどん拡大した日本のインフラは、今一斉に耐用年数が来ています。橋、水道のような生活に不可欠なインフラが、どんどん劣化しています。地域では、橋の付け替えをあきらめるというケースも見られます。
そこで何が起きるか。あらためて”ユニバーサル・サービス”を維持し続けるのかを問われています。水、電気のようなものを遠くまで運ぶのではなく、簡易水道とか地域発電のように、ローカルの範囲でまかなうという発想も出てくることでしょう。ドローンを使って山間部の運搬をする実験もおこなわれています。
●リスクにどう対応するか
今回まで5回にわたる総合政策委員会では、そのような大きな情勢把握のもとに、民間の通信業者、企業団体、学者の意見をヒアリングしてきました。だいたいは、今このような取組みしている、今後はこういうことに注力していく、というトーンの説明が多いようです。それはそれで、どうぞそのままがんばってください、としか言えません。
逆に懸念される事柄として、特に経済安全保障の話題が急に目立ってきました。海外との通信が依存している海底ケーブルの安全維持や、ルーターのような通信機器を海外製に依存している点も指摘されています。
通信の中長期を語る場合には、”こんなことができます”ではなく、”こんな事態に対応できます”という視点を忘れてはいけないと感じました。■