フェイク情報を見抜けるか
(2023.03.09)
総務省「プラットフォームサービスに関する研究会(第42回)」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/platform_service/02kiban18_02000264.html
●プラットフォームとは何か
ここでいうプラットフォーム(PF)というのは、①ネットワーク効果があること、②多面市場であること、③インターネットを通じてサービス提供していること、という特徴を持っていて、社会に多大な便益をもたらすとともに、低い限界費用のため独占・寡占に陥りやすい業態を指します。
実はプラットフォームに対しては、2019年頃から個人情報の保護や公正な競争を脅かすものとして具体的な懸念が議論され始めていました。
●プラットフォームへの規制
その議論の一つの結果として、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(2020年5月27日成立、2020年6月3日公布)が作られました。この法律は取引の透明性・公正性を高める必要性の高いプラットフォームを提供する事業者を「特定デジタルプラットフォーム提供者」として指定し、規律の対象とします。「特定デジタルプラットフォーム提供者」は、取引条件等の情報の開示及び自主的な手続・体制の整備を行い、実施した措置や事業の概要について、毎年度、自己評価を付した報告書を提出しなければいけないことになっています。現在のところ、特定デジタルプラットフォーム提供者として、Amazon、楽天、Yahoo!、Apple、Google、Meta(旧Facebook)が指定されています(それぞれ事業の特性ごとに分類が分けられています)。
●プラットフォームに関わる省庁
いろいろな省庁がプラットフォームの動静に注目しています。おおまかなものを挙げると次の表のようになります。
総務省プラットフォームサービスに関する研究会 | 通信の秘密保持、フェイク記事や中傷記事の排除、セキュリティ |
個人情報保護委員会 | 個人情報の保護 |
消費者庁 | プラットフォーマーを介した取引における消費者保護 |
公正取引委員会 | 公正な競争がおこなわれているかを監視 |
デジタル市場競争本部 | プラットフォーマーを含むデジタル市場全般の議論 |
●プラットフォームサービスに関する研究会
今回とりあげたこの研究会は、総務省における偽情報対策、誹謗中傷等の違法・有害情報への対策についての議論の場です。
日本でもネットワーク上でのトラブルが現れてきており、何らかの根本的な対策を考える必要に迫られています。しかし、通信の秘密を守るという大原則があるため、通信の内容に関わる規制は慎重にならざるを得ません。また規制を強めることは、自由な発想を妨げてイノベーションの障害となる可能性もあります。このあたりをどう整合をとっていくかが悩ましい課題です。
2020年8月に「インターネット上の誹謗中傷への対応」に対する意見募集(いわゆるパブリックコメント)をしたところ、ネットワーク事業者の意見は規制には消極的でした。
今回の研究会では「偽・誤情報の現状とこれから求められる対策」(国際大学グローバルコミュニケーション・センター 山口真一准教授)が偽・誤情報の現状を具体的に説明されています。特に生成系AI(Generative AI)を使って、現実と見紛う架空の風景画像を作り、それをあたかも事実のように情報拡散した事例が取り上げられています。さらに恐ろしいのは多くの人がその偽情報を偽物と認識していないことです。世界各国でこの問題への対応策をおこなっていますが、ポイントは、①偽情報を発信させない、②ファクト・チェックをおこなう、③技術による対抗、そして④だまされないような能力の涵養、だそうです。
まだまだ議論が必要と思われますが、上の①~③の機能は必ず必要とされるはずですので、少なくとも技術的に可能とできるように、準備はしておかねばなりません。■